季刊 住宅土地経済の詳細

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タイトル 季刊 住宅土地経済 1995年冬季号
発行年月 平成7年01月 判型 B5 頁数 40
目次分類テーマ著者
巻頭言今、求められる土地政策とは安藤太郎
座談会内外価格差と住宅土地問題金本良嗣・小峰隆夫・山本繁太郎
研究論文情報の不十分性と地価西村清彦
研究論文持ち家住宅資本コストと公的融資中野英夫
海外論文紹介住宅市場動学と住宅価格の将来予測矢澤則彦
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 本号の第1論文は、西村氏による「情報の不十分性と地価:商業地市場の地価形成」である。西村氏はすでに日本の土地市場の特性と効率性について、いくつもの論考を発表しておられる(本論文の参考文献参照)。本論文において西村氏は、1962?1992年の期間の商業地市場を対象として、1985年ごろまでの地価形成がいわゆるファンダメンタルの動きで十分説明できるものであったこと、他方それ以後の地価の動きはまったく異質であり、新しいモデルによる説明が必要であることを論じている。後者について、著者は「不完全情報下での価格乗数モデル」と呼ばれるべき理論を展開する。
 1985年ごろまでの地価形成について、著者は商業地地価の変動を、実質地代変化(実際には代理変数を用いる)マイナス実質金利変化というマーケット・ファンダメンタルズで説明する形を考え、簡単な統計的および計量経済学的手法によりこの想定が適切であることを証明する。さらに同じ期間について、商業地市場が情報効率的であったことも示される。(第1節)
 第2節で西村氏が提出するモデルは、一方において合理的長期均衡予想を持つ土地保有投資家群(A)があり、他方においてそれを持たない土地購入希望投資家群(B)がいるという想定に基づいている。Bに属する投資家の将来地代に関する予想が合理的な期待よりも高ければ、特定の土地の現在価格zが理論地価q*よりも高くとも、この土地が売れる確率はゼロよりも大きい。同じ理由で、zが同じような土地の平均価格qよりも高くとも、この土地の売れる確率はゼロより大きくなる。土地の売れる確率を以上の想定の下でP(z,q;q*)と表し、土地保有者の期待利得ΠをPを含む諸変数の関数として表す。このモデルでは、Πを最大化するzおよびqはq*よりも大きくなる。かつ、局地的にzが高くなるとそれがqを高め、それがまたzの上昇に反映されるという乗数プロセスが働く。このようなモデルに基づいて、西村氏は1985年以降の6大都市商業地地価の上昇・下降プロセスのシナリオを巧みに措いてみせる。
 
 第2論文は、中野氏による「持ち家住宅資本コストと公的融資」である。住宅取得のための公的融資の利子率rgが市場利子率rより低いという条件のもとで、異時点間予算制約に従いつつ、効用の時差割引付き時間積分値を最大化するという消費者行動を考えるならば、住宅サービスと合成財(所得)の間の限界代替率は、 = pth[r(θk+(1-θ))+τh]に等しくなる。ここで、 phは住宅価格、 θは住宅取得価格に対する公的融資比率、 τhは固定資産税率、kは、k=で表される、公的融資利用による相対的有利度である(Tは公的融資の返済期間の長さ)。
 右辺の[・]が住宅取得についての資本コストにほかならない。わが国の都道府県別にみると、住宅金融公庫の融資条件に大きな差異はないが、融資の主な対象が土地よりも建物であるために、 θkにおいて大都市圏と地方圏では大きく差を生ずる。その結果、資本コストに差を生ずることとなり、1万円当たり補助金額が、最高の山口では906円、最低の東京では248円となってしまう。
 さらに著者は、住宅資本コストの時間的推移に着目し、その変化のph、θ、r、r等の諸構成要因変化に対する偏弾力性を1990年について都道府県別に計算している。その結果、rについての偏弾力性がすべての地域で0.9を超えて最も大きく、rについてのそれは地域間のばらつきが大きい。したがって、全国一律にrを変化させても、それが住宅資本コスト、ひいては住宅投資需要に及ぼす影響には大きな地域差があることになる。もちろん、その住宅投資規模との相対での影響は地価の高い大都市圏では小さく、地価の安い地方圏では大きい。最後に、1982年から1983年にかけての資本コストの変動に対する各要因の貢献度をみると、市場要因rのそれに比べて、公的要因r、θの貢献は小さい。これはひとつには、公的融資の返済期間の長さTを短く想定していることによる。Tを大きくすることによって、公的融資の貢献をより高めることができる。これが著者による政策的結論のひとつである。(N.S.)
価格(税込) 750円 在庫

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