季刊 住宅土地経済の詳細

No.83印刷印刷

タイトル 季刊 住宅土地経済 2012年冬季号
発行年月 平成24年01月 判型 B5 頁数 40
目次分類テーマ著者
巻頭言都市部のケア政策宮島俊彦
座談会今後の高齢者向け住宅のあり方井上由起子・小早川仁・中川雅之・山口敏彦
論文環境配慮型建築物が不動産価格に 与える影響吉田二郎・清水千弘
論文米国コンドミニアム法は再開発を阻害するか?山崎福寿・定行泰甫
研究ノート経済学による都市計画法制の再構築浅田義久
内容確認
PDF
バックナンバーPDF
エディ
トリアル
ノート
本号の2 論文は住宅の価格に法や制度がどのように影響しているかを理論的、実証的に検討し、その制度や法のあり方を検討したものである。

吉田・清水論文(「環境配慮型建築物が不動産価格に与える影響―日本の新築マンションのケース」)は、断熱や省エネ、長寿化など環境配慮型の住宅に対する需要者(消費者)の支払意思額を分析したものである。
分析は、民間企業が収集したマンションの募集価格と取引価格(成約価格)のデータをプールして、各マンションの環境性能ラベルや周辺環境を取り込んだヘドニック価格関数を推計し、環境性能に対する支払価格を推定している。ヘドニック分析はデータの制約上からこれ以上の精緻化が望めないレベルとなっている。そして分析の結果、環境性能表示のある物件は4.7%のプレミアムを持つとしている。また、環境性能の詳細では、長寿化はプレミアムが大きいが、緑化は取引価格ではプレミアムは小さく、省エネは逆にディスカウントになるとしている。
これらの解釈はきわめてむずかしい。まず、成約価格は需要者が各性能にどの程度支払意思を持っているかを表していると思われるが、募集価格は論文では売主(供給者)の希望価格としていて、これには疑問が残る。また、省エネ機能のディスカウントが省エネには追加的費用がかかるためとしているが、追加的費用を加えての省エネ表示にすべきであろう。
施策を検討する際には、吉田・清水論文で考慮している環境要因を外部性がない要因と外部性がある要因に分けて考慮する必要がある。長寿化には、外部性はないため補助政策をとる必要がなく、吉田・清水論文でも示されているように、私的費用の低減を予想し消費者はプレミアムを払っている。それに対して、プレミアムがないとされた緑化は外部性があり、補助政策が必要である。
このような疑問点もあるが、吉田・清水論文は住宅の質、特に環境配慮に関する要因を加味したヘドニック分析で環境要因に対する価値を分析した点で優れた研究である。できれば、生産費用も検討に加えてほしい。今後、より環境配慮が望まれるなかで、このような精緻な研究をもとに施策を検討することが期待されている。

山崎・定行論文(「米国コンドミニアム法は再開発を阻害するか?―ハワイとロサンゼルスのデータを用いて」)は、米国の区分所有法に当たるコンドミニアム法がコンドミニアム(日本でのマンション)の建替えを阻害しているかを実証的に分析したものである。
理論的には、建替え最適化モデルに建替えの意思調整コストを加味し、そのコストによって建物価格の減価率が大きくなっていることを用いて検討している。日本の区分所有法のもとでのマンション建替えの意思調整コストと、米国のコンドミニアム法のもとでの意思調整コストは異なっており、これが日米の建物価格の減価率の違いにつながると指摘している。そして、意思調整コストがマンション一棟に入っている総戸数に比例しているとして、総戸数と減価率の関係を分析している。
実証分析では、ハワイとロサンゼルスの公開データを用いて家賃関数、価格関数を推計している。推計の結果、両者とも減価率に総戸数が影響しないことが明らかにされている。また、日本のマンションを対象とした先行研究と、ニューヨークのコンドミニアムを対象に行なった先行研究が紹介され、日本の例では総戸数が減価率に有意に影響を及ぼしており、コンドミニアム法と区分所有法の違いが示唆されるとしている。
推計の問題としては、サンプリングバイアスと内生性が除去されているかについてやや疑問が残る。特に、ハワイのサンプルについては、賃貸物件のサンプル数は少なく、さまざまなタイプの物件が入っており、家賃の標準偏差がきわめて大きい。また、売買物件は説明変数が不足しているのか、説明力が小さい。
山崎・定行論文もこのような問題点はあるものの、日本の区分所有法の問題点を指摘した点できわめて興味深い。特に、1960年代に建てられたマンションの建て替えが問題となってきており、施策を考えるうえでもインプリケーションに富んでいる。
価格(税込) 750円 在庫

※購入申込数を半角英数字で入力してください。

購入申込数