タイトル | 中古住宅流通と住宅金融公庫―中古住宅は何故取引されなかったのか― | ||||
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発行年月 | 平成28年03月 | 判型 | A4 | 頁数 | 118 |
概要 | 日本の中古住宅市場は欧米に比べて極端に小さく、その改善が住宅政策における目標の1つとなっている。一般的には、情報の非対称性がその原因として挙げられており、政策的にも様々な対応がなされている。しかし、これまでの研究から日本国内の中古住宅流通量や流通シェアは、一般的に指摘されているほど小さいものではないという指摘がある。例えば、原野(2014)では、近年では年間取引量のおよそ半分程度が中古住宅である可能性について議論している。 情報の非対称性が日本の中古住宅市場に存在することは事実であり、それらが取引に何らかの影響を及ぼしている可能性は当然考えられる。しかし、情報の非対称性だけが、中古住宅市場を低迷させている原因だとは考えにくい。なぜなら、日本の住宅政策は、長らく新築住宅の取引を促すような政策を行ってきており、そうした政策が住宅流通に及ぼした影響は小さくないと考えられるからである。また、バブル経済の崩壊後、経済政策・景気対策として新築住宅の取引を積極的に推し進めてきた事実もあり、こうした政策対応が現在の住宅市場に与えた影響は無視できないのではないだろうか。 この報告書では、こうした疑問に答えるために、戦後の住宅政策において中心的な役割を担ってきた住宅金融公庫(現 住宅金融支援機構)が、住宅取引においてどのような融資を行ってきたのかについて調査研究を行ったものである。報告書では、特に新築住宅向け融資と中古住宅向け融資の違いを明らかにするよう努めている。調査の結果、住宅金融公庫融資では、金利や償還期間などの利用条件において新築住宅を購入する方がより有利な基準が設定されていることが確認された。また、そうした融資基準の変化は、取引された住宅属性に影響を及ぼしていたことも確認できた。すなわち、戦後の住宅取引において極めて重要な位置を占めてきた住宅金融公庫は、個人の持家取引に何らかの影響を及ぼしている可能性が示されたのである。調査結果の詳細は本編に譲ることとするが、これらの調査結果は「情報の非対称性以外の要因が、中古住宅流通に及ぼしてきた影響について検討する」という当初の目的を達成できたことを示している。 本調査が、今後の住生活や住宅市場を充実させる際の参考になれば幸いである。 |
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目次 | 1.調査の背景と目的・・・3 1.1.調査研究の目的・・・3 1.2.従来の中古住宅市場に関する研究・・・3 1.3.調査研究の方法・・・5 2.住宅金融公庫による住宅融資の全体像・・・6 2.1.住宅金融公庫による融資の概要・・・6 2.1.1.住宅金融公庫による融資件数・・・6 2.1.2.住宅金融公庫の利用割合・・・9 2.1.3.住宅金融と公庫融資・・・11 2.1.4.住宅金融公庫融資と住宅建設五箇年計画・・・14 2.1.5.住宅金融公庫融資と経済対策・・・16 2.2.住宅金融公庫の歴史的変遷・・・19 2.2.1.設立の経緯昭和20年代前半・・・19 2.2.2.公庫住宅建設基準の制定・・・21 2.2.3.継続する住宅不足?昭和20年代後半から昭和30年代・・・21 2.2.4.昭和40年代前半?住宅建設五箇年計画のスタート・・・22 2.2.5.昭和40年代後半?50年代前半?量から質へ・・・22 2.2.6.昭和50年代後半?60年代前半?経済構造の転換・内需拡大へ・・・25 2.2.7.平成以降?バブル景気とその崩壊・長引く不況への対策・・・28 2.3.公庫融資における中古住宅の扱い・・・31 2.3.1.公庫融資における中古住宅向け融資の概要・・・31 2.3.2.公庫融資における新築向け融資と中古向け融資の比較・・・32 2.3.3.公庫融資が新築住宅と中古住宅の取引に占める割合・・・33 2.3.4.新築住宅向け融資と中古住宅向け融資における適用金利の差・・・35 2.3.5.五箇年計画における中古住宅の扱い・・・35 2.3.6.第2章のまとめ?公庫融資と中古住宅?・・・36 3.融資条件と融資基準の変化・・・38 3.1.融資条件にみる中古住宅の扱い・・・38 3.2.融資を受けることができる者・・・39 3.3.対象となる住宅および建物・・・40 3.4.貸付金の限度・・・50 3.5.利率・・・54 3.6.償還期間・・・59 3.7.融資条件にみる中古住宅の扱いの整理・・・65 4.データで見る融資状況とその推移・・・66 4.1.利用するデータと全体の傾向・・・66 4.2.住宅面積の推移・・・69 4.3.購入価額の推移・・・71 4.4.建築後経過年数の推移・・・73 4.5.公庫からの貸付金の推移・・・75 4.6.償還期間の推移・・・77 4.7.月額返済額の推移・・・79 4.8.世帯年収の推移・・・81 4.9.DTIの推移・・・83 4.10.手持金(頭金)の推移・・・85 4.11.手持金割合の推移・・・87 4.12.世帯主年齢の推移・・・89 4.13.公庫融資を利用して中古住宅を購入した個人(世帯)の傾向・・・91 5.まとめ―住宅金融公庫と中古住宅流通の関係―・・・93 5.1.各章の要約・・・93 5.2.考察・・・94 補論民間金融機関における中古住宅向け融資について・・・96 A)民間金融における個人向け住宅金融・・・96 1.住宅ローンに占める公的資金と民間至近・・・96 2.新設住宅着工にみる公的資金と民間資金の変遷・・・99 3.民間住宅金融の変遷・・・102 B)民間住宅金融における中古住宅向け融資・・・107 1.中古住宅向け融資の開始時期・・・107 2.昭和55年時点での中古住宅向け融資の実態107 3.昭和55年における住宅ローンの概要・・・108 4.昭和55年における中古住宅向け住宅ローン・・・109 3.まとめ・・・116 参考文献・・・117 |
価格(税込) | 1,650円 | 在庫 | ○ |
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