単行本の詳細

No.11815印刷印刷 --- PDFの有無

タイトル 欧米4か国における政策税制の研究
発行年月 平成26年03月 判型 A5 頁数 314
概要 公益財団法人日本住宅総合センターでは、過去5か年度にわたり、「海外住宅・不動産税制研究会」(座長:中里実東京大学大学院教授)を設置して主要各国の住宅・土地関連税制について調査研究を行い、その成果を「欧米4か国におけるキャピタルゲイン課税制度の現状と評価」(2008年6月)、「欧米4か国における住宅・不動産関連流通税制の現状と評価」(2009年5月)、「相続・贈与税制再編の新たな潮流」(2010年6月)、および「主要先進国における住宅・不動産保有税制の研究」(2011年6月)として、順次、刊行してきた。本書はそれらに続く、同研究会編著の第5弾である。
住宅ローン減税制度をはじめとするわが国の住宅・土地税制のほとんどは、租税特別措置法や地方税法附則による本則に対する特例、いわゆる政策税制として位置づけられている。それらの多くは短期間の時限措置であり、かつ、何度も延長されながら長年にわたって継続しており、極端なものは昭和30年代から継続しているものもある。しかも、それら特例の適用期限は一様でないため、毎年のように延長の議論が繰り返されている。
本書は、こうした状況に鑑み、今後のわが国の政策税制のあり方の検討に資することを目的として、主要先進国(英・米・独・仏)における住宅・土地関係を中心とする政策税制について、その内容、政策目的、存在形式、適用期限、減収額等を調査するとともに、各国における政策税制措置に対する評価と制度改編に際しての議論の実態等を記述したものである。
さらに、OECDでは、租税特別措置による減収を財政支出の一種と捉える、いわゆる「租税支出」についての各国の取組みをとりまとめているが、これは、租税特別措置の蔓延による税収減に悩む多くの国々において租税特別措置を考える際の基本的出発点をなすものの一つであることから、その抄訳を試み、資料編として収めている。
過去5か年度に続き、座長として全体統括にあたられた中里実東京大学大学院教授をはじめ研究会にご参加いただき執筆にご尽力賜った研究者各位に、謝意を表するとともに、本書が租税法や関連分野の研究者のみならず、さまざまな実務に携わる方々にも幅広く活用されることを期待するものである。
目次 序章
中里 実(東京大学大学院法学政治学研究科教授)…1
はじめに……2
1.政策税制の概念……2
2.政策目的実現の手法……4
3.課税と政策目的……5
4.政策税制の分析……6
5.法的統制の差異:補助金とマイナスの租税……6

第1章 英国における政策税制
―租税減免措置(Tax Relief)を中心として―
佐藤和男……9
はじめに……10
第1節 英国政策税制の内容……12
1.所得関係諸税における Tax Relief あるいは Tax Expenditure
─不動産関係を中心に─……12
2.相続税に関する特例措置……19
3.土地印紙税(Stamp Duty Land Tax)に関する特例措置……23
第2節 英国政策税制に関する課題……28
1.我が国における土地・不動産税制に係る政策税制へのアプローチ……28
2.米国における Tax Expenditure についての論議の変遷……30
3.英国における政策税制の検討と課題……33
第3節 租税制度簡素化への動き……44
1.租税簡素化局リポートについて……44
2.不動産関係税制に関する検討……47
3.結語……54
まとめ……55

第2章 アメリカ 主要先進国における政策税制の研究
藤谷武史(東京大学社会科学研究所准教授)……57
序 論 本章の目的……58
第1節 米国における「規制目的の租税(Regulatory Taxation)」…… 61
1.制度的背景……61
2.連邦議会の課税権限(Taxing Power)の射程を巡る判例の展開……63
3.医療保険制度改革法と課税権限(Taxing Power)条項……66
4.小括……70
第2節 米国における「租税支出(Tax Expenditure)」を巡る議論の概観……71
1.「租税支出」概念の提唱と制度化……71
2.「租税支出」概念への理論的批判……73
3.租税支出予算の制度的変容……75
4.租税支出予算の実効性?……78
5.情報提供機能に特化した「租税支出」の枠組みの可能性?……80
6.「租税支出」論の行方?……83
第3節 むすびにかえて
―米国の「政策税制」が置かれた固有の文脈……86

第3章 ドイツにおける政策税制……91
I.政策税制と憲法―ドイツ法を素材とした序論的考察
渕 圭吾(学習院大学教授)……92
第1節 問題提起と日本法の概観……92
1.税制と憲法……92
2.租税に関する日本の憲法判例……94
第2節 ドイツ法…………119 1.問題状況……119
2.連邦とラントとの間における立法管轄権の配分……128
3.法治国原理に基づく限界……136
4.基本権に基づく限界……140

II.ドイツ政策税制における「租税優遇」制度の現況
―その制度的枠組みと評価の視点―
山田ちづ子(公益財団法人 日本住宅総合センター・前主席研究員)……162
はじめに……162
第1節 「租税優遇」の概念……163
1.租税上の特殊な例外規定としての間接補助金……163
2.租税収入の放棄あるいは「隠れ補助金」としての「租税補助金」……165
3.納税者の行動や状態に変化をもたらす特殊な補助金……166
第2節 「第 23 次補助金報告書」(2011 年)にみる 租税優遇制度の概況……167
1.財政援助と租税優遇……167
2.主な租税優遇制度の実施状況……169
3.連邦の補助金政策ガイドライン……172
第3節 住宅分野の租税優遇制度
―最大規模の租税優遇としての持家取得給付金制度の評価―……175
1.租税優遇の一形態としての給付金(Zulagen)制度の展開
―租税政策としての意義―……175
2.持家取得給付金制度の効果分析……179
第4節 租税優遇制度の評価をめぐる諸論議……182
1.租税を特定の政策目的のための手段として利用することの是非や妥当性の検証……182
2.租税優遇制度の枠組み・要件の妥当性の検証
―政策目的・目標の評価軸の確立―……186
3.政策目的の達成度と累積的・総合的な政策検証
―政策効果の全体像とその評価体系の明確化―……187
4.直接補助金との関係性および代替可能性の検証……190
5.「租税優遇評価報告書」(連邦財務省、2009 年)における分析結果の検証の必要性……192
第5節 結語に代えて?今後の課題と我が国への示唆?……195

第4章 フランスにおける政策税制と租税支出
中里 実(東京大学大学院法学政治学研究科教授)……199
はじめに……200
第1節 フランス財政の特色……202
1.フランス大蔵省……202
2.経済統制と大蔵省:強大かつ広範な大蔵大臣の権限……203
3.強固な官僚制を支える教育……204
第2節 特別措置と誘導の概念整理…………205
1.課税上の特例に関する用語……205
2.経済誘導ないし介入に関する用語……206
第3節 フランスにおける租税支出に関する議論……206
1.租税委員会と公課委員会の報告書……206
2.租税委員会および公課委員会の報告書を受けた、さまざまな国家機関における租税支出の扱い……210
3.租税歳出論をめぐる学説におけるさまざまな議論……217
まとめ─政策税制の財政法的統制の必要性……223

終章 総括
中里 実(東京大学大学院法学政治学研究科教授)……225
1.どこまでが課税の本則で、どこまでが政策税制か……226
2.租税特別措置のまとめ……228
3.租特透明化法について……231
4.将来の方向性……233
まとめ……235

[資料編]Tax Expenditures in OECD Countries(OECD, 2010)の抄訳

不動産特別措置に関する研究……OECD 翻訳序文
中里 実(東京大学大学院法学政治学研究科教授)……239
第1章 序論
浅妻章如(立教大学法学部国際ビジネス法学科准教授)……240
租税支出とは何か?……240
さまざまな種類の租税支出とはどのようなものであるか?……241
租税支出をどのように計測するか?……241
租税支出の傾向……242
租税支出を定義する……243
租税支出を巡る論争……245
参考文献……247

第2章 政策の背景と実務
神山弘行(神戸大学大学院法学研究科准教授)……249
政策の背景……249 何故、租税支出は採用され、
どのような場合に上手く機能するのか?……250
執行上の規模の経済と範囲の経済……250
濫用または不正利用の限られた可能性……250
納税者選択の適切な範囲……251
担税力の測定……251
理論的主張:どのような場合に、どのような理由で、租税支出が害悪となるのか?……251
公正……251
効率性と効果……253
複雑性……255
税収の充足……256
定義の問題……257
実務的主張:なぜ租税支出は増大し、成長するのか?……258
租税支出の数……258
租税支出の増大……259
「労働インセンティブを阻害しない」租税支出は、重要な特別ケースなのか?……261
起源と政策課題……263
義務的歳出プログラムに対する相対的利点……265
潜在的欠点:「労働意欲を阻害しない」給付付き税額控除の増大……266
「労働意欲を阻害しない」租税支出の諸問題……267
租税支出および政策立案の実際……270
報告……271
審査と監視……273
立法過程と制定……277

第3章 予算過程における租税支出の役割
吉村政穂(一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授)……279
予算ルールの類型……282
参考文献……285

第5章 結論
神山弘行(神戸大学大学院法学研究科准教授)……287
定義と測定……287
報告……293
政策形成……294
政策審査……296
租税支出の審査……296
比較可能な支出プログラムの審査……296
租税支出の数……298
租税支出の額……299
結論……303
価格(税込) 5,400円 在庫

※購入申込数を半角英数字で入力してください。

購入申込数