季刊 住宅土地経済の詳細

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タイトル 季刊 住宅土地経済 1991年秋季号
発行年月 平成3年10月 判型 B5 頁数 32
目次分類テーマ著者
巻頭言『住宅土地経済』発刊に寄せて江戸英雄
研究論文日本の土地市場は効率的か西村清彦
研究論文土地パズルと税制岩田一政
研究論文住宅金融政策の効果鴨池治
時事展望フローからストックへ高木新太郎
連載講座住宅需要の分析森泉陽子
内容確認
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ノート
 本号においても、3つの専門論文について簡単な解説を行う。前号で述べたように、この解説はあくまでとりかかりのために過ぎないのであって、各論文の神髄はそれらを精読することによってのみ、会得できるものであることはいうまでもない。
 
 まず西村論文である。ここでは、1956?1989年の時期のわが国の土地市場においての価格形成が「効率的」であったか否かが、株式市場においてのそれと比較しつつ検討される。
 ただし、ここで用いられる効率性の意味は、市場において関連する(特に収益性についての)情報が十分効率的に利用されているという、情報効率性のそれであることに注意すべきである。もちろん、このような情報効率性は、経済においての資源利用効率性のための大前提として、後者と不可分に関連している。
 さて西村氏によれば、わが国の株式市場においては、集計化された株価指数を用いた分析によってさえ、実質価格上昇率に系列相関が存在しないという形で、市場の効率性が検証される。これに反し、市街地価格指数に基づく分析では、系列相関したがって非効率性の存在が明らかである。
 しかしながら、この価格指数は土地の取引価格を十分に反映しているとはいえないので、別に農地の市街地転用価格の時系列を用いた分析を行ってみると、住宅地については首都圏を除いて非効率的な地域が多いが、工業用地については効率的な地域が多い。
 以上は貴重なファクト・ファインデイングであるが、西村氏はさらに、市場非効率性発生の要因についての推測を行い、それらに関する今後の実証研究を示唆している。これは、有効な土地政策確立のためにも重要な研究方向といえるであろう。
 
 岩田論文は、メラ=プレスコット(1985)において「株式リスク・プレミアムのパズル」の存在を証明するために用いられた理論モデルを、わが国の土地市場関連のデータ(1956?1989年)に適用して、わが国の土地資産収益率の高過ぎること、すなわち「土地リスク・プレミアムのパズル」の存在を明らかにした実証分析である。
 わが国の土地保有についてのリスク・プレミアム(危険資産である土地の収益率と安全資産の収益率?この場合、利付電電債利回り?の差)は9.9%であり、これが理論的上限値に等しくなるためには、効用関数のパラメータ値で規定される「相対的リスク回避度」(=限界効用の弾力性)は30という極端な値をとらなければならない(このとき異時点間消費の代替弾力性は、わずか0.03=30-1の値となる)。もちろん、この結論は理論的上限値を導出するために必要な、数々の仮定に依存しており、それらについても吟味が必要である。
 岩田氏はさらに、土地に関するリスク・プレミアムの変化が、諸土地統制の地価に及ぼす効果にどのような波乱的影響を与えるかを、種々の状況について検討している。
 
 最後の鴨池論文では、住宅を購入する家計、住宅を建設する企業、および賃貸住宅サービスを供給する企業の3種の経済主体に対する、別々の低利住宅金融政策の組み合わされた効果が分析される。
 各金融政策は、市場利子率rより低い金利ξ、借入期間n、および融資比率δのパッケージとして、特定式Ci(ξi,ni,δi,r)によって表現される(融資条件式)。i=1,2,3は前記3種の経済主体に対応する。新規の住宅建設に関する需給均衡式、および賃貸住宅サービスに関する需給均衡式から、例えば住宅の単位価格qと賃貸住宅の家賃料率pを両軸とする平面上に、両均衡式を示す軌跡が2本(XXとHH)描かれ、Ci、i=1,2,3各々の変化による(p,q)の均衡値の変化が吟味される(ケインズ理論においての、IS?LM分析を想起せよ)。
 それらの変化の定性は必ずしも確定的ではないが、例えば融資条件C2の向上(ΔC2>0)は、(p,q)の均衡値を必ず低下させる。
 3種の金融政策を適切に組み合わせて、住宅経済に関する複数の目標を達成すべきであると説く鴨池氏の論文は、住宅金融政策の多面性を示した点に特徴があるといえよう。(N.S.)
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