季刊 住宅土地経済の詳細

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タイトル 季刊 住宅土地経済 2016年冬季号
発行年月 平成28年01月 判型 B5 頁数 40
目次分類ページテーマ著者
巻頭言1一極集中是正論について考える小峰隆夫
特別論文2-8東京の発展と用途・容積率青山佾
論文10-19マンション管理業の経済分析西川浩平・大橋弘
論文20-27不動産の経年減価率吉田二郎
論文28-35発掘調査費用原因者負担主義が容積率・建蔽率消費に与える影響西川卓秀
海外論文紹介36-39住宅リフォームと品質に関する情報の非対称性鈴木雅智
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マンションの管理は清掃、設備点検、修繕など多岐にわたり、専門的な知識も必要となることからマンション所有者のみで行なうことは難しい。そのため、管理業務を担うマンション管理業がある。典型的には、不動産業者がマンションを建設した際に、その管理業務を関連会社に委託させる方式がとられる。
しかし、マンション管理上のトラブルが発生する、競争が激しくなるなどにより、他の管理業者に変更するマンションも出てきている。マンション管理業務は労働集約的であり、フロント業務担当者の資質によって、質が決まる面が
ある。ところが、これまで、これらの点について、十分な経済分析がなされてきたとは言い難い。
西川・大橋論文(「マンション管理業の経済分析市場競争と人的投資に関する一考察」)は、管理業協会のデータを用いて、管理業者への委託費が管理業者変更
(リプレイス)に及ぼす効果、およびフロント管理業務担当者のモチベーションと教育訓練の受講状況に関する分析を行なっている。
委託費とリプレイスの分析の結果、自社の委託費が増えると有意に他社物件数が減ることが示されている。すなわち、マンション管理市場では、委託費を下げることで顧客奪取の効果があることが示された。委託費を %下げることで他社物件数を0.243ポイント上げることができると推定されている。
フロントのモチベーションと教育訓練の受講状況に関する分析では、モチベーションとしては、「今後もフロント業務担当者として働きたいか」および「現在の仕事の総合的な満足度」という質問に対する回答により測っている。教育訓練については、定期的に受講している場合には有意な効果が得られているが、不定期な受講では有意な効果が現れていない。この結果、定期的な教育訓練の受講機会の提供によりモチベーションを向上させられる可能性があると結論づけている。
また、担当する管理数については逆U字型の効果が見られたが、担当している業務数については統計的に有意な効果が見られなかった。この結果、マンション管理業務を切り分けて業務数を減少させるかわりに担当する管理組合数を増やすよりは、業務数は増えても担当する管理組合数を減らすことが重要ではないかと考察している。
フロント業務がマンション所有者や居住者といった対人業務であることを考えれば、担当する対応すべき人数が限られることは、業務遂行上円滑化に資する可能性は高く、上記の結果は妥当であると言えよう。
今後、住宅がストック管理の時代に入り、とりわけ区分所有という複雑な権利形態のマンションの管理が重要になってきている。そのためにも、マンション管理業務の適正化はきわめて重要であり、その実態解明と、それに基づくマ
ンション法制度の整備が必要となっている。本研究をもとに、マンション管理業の分析が深められ、その知見が住宅政策に生かされることを期待したい。

人口減少・低成長時代を迎えて、今後さまざまな資産のストック管理および活用は重要なテーマとなっている。もちろん不動産も例外ではない。これまで、日本では、どちらかというと住宅は「住み潰す」資産であって、「住み継ぐ」
資産ではなかった。すなわち、新築時の価値が最も高く、減価していき、ある程度以上経過した既存住宅の場合にはかえって更地のほうが価値があるという状況になっていた。しかし長期使用に耐える建設およびストック管理を適切に行なうことで減価を抑えられる可能性が指摘され、実際、その傾向が見られつつある。
このように、不動産の減価率を適切に把握することは、今後の不動産政策を考えていくうえでも重要である。
吉田論文(「不動産の経年減価率」)では、不動産取引価格データを用いて、住宅および商業不動産の両方について経年減価率の分析を行なっている。
著者も指摘するように減価率の推定には、さまざまなバイアスが生じる可能性がある。第一に、不動産価格の経年減価率と建物の経年減価率は異なる。不動産価格には土地価格も含まれるために、一般に土地価格が安定的なのであれば、不動産価格の経年減価率のほうが小さくなる。第二に、生存バイアスがある。生存バイアスとは、使われる建物が市場に残り、使われない建物が滅失することにより、減価率の小さい建物が残存しがちとなることによるバイアスである。
この場合、長期的なデータを分析すると減価率は過小に推定されてしまう。第三に、建設費用の上昇や地価の上昇によるバイアスが生じる。クロスセクションデータを用いて分析する場合に、実際には建設時点の異なる建物同士の価格を比較することになるため、建設価格が上昇し価格が上がってしまえば、より大きな差となって推定されてしまうことになる。
吉田論文では、これら3つのバイアスを補正した減価率を求めている。
まず、経年減価のモデルを構築し、建物の減価率を求める式を導き出している。そのうえで、残存比率をもとに生存バイアスを補正する式を提案している。
以上の理論を東京および全国の取引価格のデータに適用し、建物の減価率を推定している。その結果、平均減価率は東京の住宅で年率6.1%、全国の住宅で6.5%、東京の商業不動産で15.1%、全国の商業不動産で9.9% となった。建物価値が半分になるまでの期間(半減期)は、それぞれ26年、25年、11年、16年であり、アメリカに比較して寿命が短いことが判明している。
その理由として、著者は耐震性能の技術進歩や耐震基準の改正が経年減価の大きな要因であることを指摘している。耐震性に加えて、補修管理しやすくする工法、断熱性能など建設技術にもさまざまな技術革新があるので、それらの影響もあるかもしれない。
減価率を適切に把握することは、特に既存住宅市場の価格の適正化にもつながり、実務にも大きな貢献となる。

日本で不動産開発を行なう場合、文化財保護法により埋蔵文化財包蔵地では緊急発掘調査を行なわねばならない。発掘費用については、原因者負担主義をとっているために、どうしてもその費用を減らそうとするインセンティブがある。
西川論文(「発掘調査費用原因者負担主義が容積率・建蔽率消費に与える影響」)では、そのインセンティブが容積率消費などにどのような影響を与えているかを分析している。
著者は、原因者負担主義による影響として以下の 点を指摘している。第一に、包蔵地を避けて開発する。第二に、地面の掘削を避けるために、包蔵地では階高の少ない建物を選択する。
西川論文では、大阪市から奈良市に渡る帯状の地域を対象として、消費容積率および消費建蔽率を被説明変数とする回帰分析を行なっている。その結果、全体として、埋蔵文化財包蔵地では容積率・建蔽率の消費は減退するという結果
が得られた。ただし、消費減退の仕方は、土地を制約する条件によって異なり、郊外部で消費容積率の減退が顕著となっている。都心部では、建蔽率を抑えて容積率を消費し、必要な床面積を確保する傾向が見られている。
埋蔵文化財というような、やや公共性を持つような財の保全や情報の記録を、文化財による便益を得ない開発者の負担に任せると、開発という意味では、市場が歪み、本来望ましい開発水準を確保できなくなるというのは、経済学理論
の帰結である。しかし、法律上の学説では、開発者が土地利用を行なうことで利益を享受するための調査であるということで、原因者負担主義を擁護する考え方が示されている。
法と経済学という分野は、法制度について経済学を用いて分析し、より良い法制度のあり方を探求する分野であるが、埋蔵文化財の費用負担の問題は、その適切な対象例となっているように思われる。
西川論文をさらに発展させて、原因者負担主義による社会的費用を明らかにし、社会的費用のより少ない方法を探求することで、より良い原則を提案できるであろう。
そのような研究に発展していくことを期待したい。
(Y・A)
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